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あらすじ

最強人間を謳われる超一流ハンター・リュウと、最強モンスターを謳われるブラックキャット・キラ夫妻。
2人(1人と1匹)と仲間の子育てパニック!
しかし主人公の性格が性格なので下ネタ連発要注意。
『NYANKO』の続編です。物語の順番としては『NYANKO』の次にこの『NYANKO2』が来るわけですが、すでに世代交代版の『HALF☆NYANKO』と『HALF☆NYANKO2』があるのでそちらを先に読んでしまっても良いと思います。




本館『NYAN☆PUNCH!』
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第1話 初代主人公&ヒロイン復活


 ここ葉月島で、人間と人間に近いモンスターが結婚出来るようになったのは約5年前のこと。

 春の生暖かい微風にその黒髪を靡かせられながら、自宅屋敷の裏庭に寝転がっている、葉月島葉月ギルドの副ギルド長兼、最強人間を謳われる超一流ハンター・リュウ(26歳)。
 腕の中には、自分の身体とは打って変わって、華奢で小柄な身体をしているブラックキャットという猫科モンスターの妻・キラがいた。
 キラは25歳であるが、大人になってからは老けない純モンスター故に、その外見年齢は20歳の頃から変わっていない。

 黒猫の耳に尾っぽ、真っ白な肌。
 陽に照らされて輝く銀色の長い髪の毛は、まるで一本一本がガラスで出来ているようだ。
 そのこの世に並ぶ者がいないほど整った顔立ちは、寝顔でさえもリュウの瞳を奪ってしまう。

 細い首に巻かれている赤い首輪は、野生のモンスターではないという証。
 リュウの妻であり、そしてペットであるという証。

 それに触れるリュウの指先が少し震える。

(キラ……)

 他にも首輪は持っているのだが、キラがこの首をつけているとときどき思い出すことがある。

(もう二度と、俺の前から消えようとするなよ……)

 キラとって大切な仲間と、何よりも大切な飼い主――リュウ。
 それを守るため、キラがこの首輪を自ら外したときがあった。

 そしてブラックキャットだけが持つ『破滅の呪文』を使って、この世から骨も残さず消滅しようとしたときがあった。

 キラはもう『破滅の呪文』は使えない。
 だが、あの日の恐怖は生涯リュウの中から消えてくれそうになかった。

(なあ、キラ…? もう二度とだ。もう二度と、俺の前から消えようとしないでくれ……)

 リュウの唇が、キラの黒猫の耳に重なる。

(俺はおまえ無しで生きていけるほど、強くねえ……)

 ぴくんと動いたキラの黒猫の耳。
 長い睫毛を生やした瞼が開き、大きな黄金の瞳がリュウの凛々しく整った顔立ちを捉える。

「リュウ……」

「悪い……、起こしちまったか」

 と、リュウの唇がキラの額に、頬に、唇に重なる。
 ついでに手はキラの胸へ。

 その手を掴みながら、キラが狼狽して声をあげる。

「…っ…おい、リュウっ……!」

「ああ、いつ触ってもでけー乳……」

「こ、こらっ、ダメなのだっ……!」

「挟みてー」

「き、聞いているのかリュウっ…! い、行くぞっ……!」

「え? もうイクのかよおまえ。俺まだ乳しか触ってな――」

 ビシッ

 と頭に竹刀が振り下ろされてきて、リュウの言葉が切れた。
 その竹刀を持っている者に顔を向けたリュウ。

「いてーよ」

 ゴスッ!!

 とゲンコツをお返しした。

 相手は4歳の息子である、長男・シュウだ。
 黒猫の尾っぽはキラから受け継いだものの、その黒髪や顔立ちはリュウと瓜二つ。

「いてーのはオレのほうだ、このエロオヤジ!」

 と頭を抱え、涙目になっているシュウは、リュウとキラの近くで剣術の修行中だった。

「うるせー、バカ息子。おまえも将来はエロエロだ」

「あんたといっしょにすんな! ああもう、いてーよおぉぉおおぉぉぉおう! このオニィィィィィィィィィィィ!」

 と泣き喚くシュウに、溜め息を吐いたリュウ。

「ったく、うるせーな」

 と言いながら、シュウのコブになった頭に治癒魔法を掛けてやる。
 ゲンコツを食らわせた上にバカ息子なんて言ったが、リュウにとってとても大切な息子である。

 キラが『破滅の呪文』を使う前から、リュウにはいくつか夢があった。
 1つ目は、キラと結婚して、子供を作って、家族皆で幸せに暮らして、最後にはキラと一緒の墓で眠ること。

 キラが『破滅の呪文』を使ったとき、それは消えてしまったかのように思えた。
 だからシュウが産まれたとき、リュウはどれだけ嬉しかったかことか。
 普段は滅多に泣かないのに、涙を流して喜んだのを覚えている。

 それからキラが初めてリュウの子を腹に宿したとき、仲間の間で男が産まれるか女が産まれるか話したことがあった。

『俺とキラの子なんだから、どっちでもいい』

 リュウはそんなことを言った。
 でも、男だったら名前はシュウ。
 女だったら名前はミラ。

 最初に産まれたのはシュウだったが、ミラはそれから半年後には産まれた。
 10ヶ月で産まれる人間と、2ヶ月で産まれる猫科モンスターの子――ハーフは、約5ヶ月で産まれるが故に。
 ちなみに現在、次女・サラと、双子の三女・リン、四女・ランもいる。

(ミラが産まれたら『絶対嫁にやらない』)

 あのとき、そう願って言ったのを覚えている。
 もちろん、サラとリン・ランが産まれたときも同じことを言ったが。
 これが2つ目の夢といえば、そうかもしれない。

(俺の可愛い黒猫――キラとの間に出来た大切な娘を、ヤロウなんぞにくれてやるかってんだ)

 それから、

(シュウが産まれたら『俺を継ぐ超一流ハンターにすること』)

 これがリュウの3つ目の夢だ。

(ハンターになれるのはその年で満16歳以上になる人間、または人間に近く、且つペットであるモンスター、そのハーフ。そして何よりも、普通の人間よりも強い力を持っている者だ)

 無論、シュウに力の心配はいらない。
 父親はもうバケモノ並に強いし、母親も最強を謳われるブラッキャットの中でも特に最強だ。
 その間に生まれたのだから、弱いわけがない。
 何もしなくたってハンターになれるだけの力は持っているだろう。

 だが、リュウの夢はあくまでもシュウを『俺を継ぐ超一流ハンターにすること』。
 弱くないからと言って、何もしなかったら到底叶う夢ではない。
 リュウ自身も年々強くなっているものだから、尚更だ。

「お、おい、リュウっ…!」とキラが声をあげる。「行くと言っているではないかっ……!」

「ったく仕方ねーな、俺の可愛い黒猫は。まだ乳しか触ってねえってのに――」

「おい!」と、リュウの言葉を遮ったシュウ。「ぜったいオヤジの言う『いく』と母さんが言う『いく』はちげーと思う!」

「ああ?」と眉を寄せたリュウが、キラに顔を向けて訊く。「イクんだろ? キラ」

「い、行くのだっ……!」

「ほら見ろシュウ。おまえはガキだからちょっとあっち向い――」

「病院にっ!」

「は?」

 病院に?

 と首をかしげたリュウ。
 大きくなっているキラの腹に顔を向け、狼狽して声をあげた。

「バッ、おまっ、産まれるのか!? 早く言えよ!」

「さ、さっきから言ってるではないか! 病院に行くと! リュウ、おまえの頭はどうしてそうスケベなのだっ!?」

 とキラに半ば驚愕されながら、ポケットから携帯電話を取り出したリュウ。
 リンクという同い年の親友の、そのペット――ホワイトキャットのミーナ(17歳)に電話を掛ける。

 ブラックキャットが黒猫の耳と尾っぽを持っているなら、ホワイトキャットは白猫の耳と尾っぽを持っている。
 また、魔法は『破滅の呪文』しか持たないブラックキャットに比べ、ホワイトキャットは豊富な魔法を持っていた。

「おい、ミーナか!?」

「うむ、ミーナだぞ、リュウ」

「産まれるから病院に瞬間移動頼む! 今裏庭だ!」

「おお、コウノトリが私の姉のようなキラの腹に宿していった子がついに出てくるか! 分かったぞ、すぐ行くぞ!」

 と電話の向こうから聞こえた数秒後、目の前にミーナが現れた。
 手にはしっかりと、リュウとキラの寝室に置いておいたお産のときに必要なものを詰めたバッグを持っている。
 リュウがキラを抱き上げ、いざ瞬間移動で葉月病院へと行こうかというとき、

「おい、オヤジ!」とシュウが呼び止めた。「もうこれでイモウトはいらねーからな!」

「んなこと俺に言われてもな。出来んのが女ばっかなんだから仕方ねーだろ。なんだ? おまえ。このハーレムが気に入らねえって言うのか」

「お・お・す・ぎ・る・ん・だ・よっ! そりゃイモウトは可愛いけど、オレは今でもすでにすげー苦労してんだよ! てか、子作りにはげむ時間があったらオレに次の剣じゅつ教えろよな!」

「安心しろ、シュウ。キラとのイトナミの時間は減らせねーが」

「へらせよっ!」

「今日キラがおまえの妹をさらに3匹無事に産み終わったら、おまえのことは今までに増してビシビシ鍛えてやる。おまえは将来、この俺を継ぐ超一流ハンターにならなきゃいけねー運命だからな。俺はおまえをまず……そうだな、一流以上でハンターデビューさせてやるよ」

「お、おうっ、オレがんばるっ……!」と、笑顔になったシュウだったが、はっとして顔を強張らせた。「――って、オ、オオオ、オヤジッ……!?」

「何だ」

「さっき、母さんがオレの何をさらに何匹ぶじに産みおわったらって言った……!?」

「おまえの妹をさらに3匹」

「――いっ、いらねえぇぇええぇぇええぇぇええぇぇええぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇえっ!!」

「じゃ、行ってくるから留守番しっかりな。妹たち守れなかったらどうなるか分かってんな? んじゃミーナ、瞬間移動頼む」

「うむ! では行ってくるぞ、シュウ♪」

「ま、待ってくれえぇぇええぇぇえええぇぇぇえぇぇえっ!!」

 とシュウが絶叫する中、リュウとキラ、ミーナはその場から消えて行った。

「母さん、3匹も出さないでえぇぇぇええぇぇええぇぇええぇぇええぇぇえぇぇええっ!!」
 
 
 
 
本館『NYAN☆PUNCH!』

第2話 三つ子発射

 キラのお産のため、葉月島葉月町にある葉月病院へと瞬間移動してきたリュウとキラ、ミーナ。
 いつものことではあるが、もう産まれる直前だったが故に、キラはすぐさま分娩室へと運ばれた。
 助産をしてくれる院長に続き、リュウとミーナも分娩室の中へ。

「いいですか、リュウさんにミーナさん」

 と、キラが乗っている分娩台から3m離れたところにいる院長。
 足を踏ん張らせ、腕まくりして両手を構え、緊張した面持ちで続ける。

「今回は三つ子です。3人のお子さんがキラさんにより飛ばされてきます。1人目は私が受け止めますので、あとの2人を頼みましたよ……!?」

「おう、任せろ院長。俺は前回に続いて2度目だから大丈夫だ」と、院長に続いて両手を構えるリュウ。「俺は2人目を受け止めるから、ミーナは3人目を受け止めろ。いいな? 絶対受け止めろよ…!? まるでロケットのように飛んで来るからな……!?」

「そ、そうかっ…! 子供というのは腹の中から外へと向かってロケットのように飛び出て産まれるものなのかっ……!」

「いや、普通は有りえねーんだが、キラの場合は特別でな……」

「おおーっ! すごいぞーっ、さすがキラだぞーっ!」

 と、ときどき極度の天然バカのキラを慕うが故に、同様にバカになってしまったミーナも2人に続いて両手を構える。
 それを見ながら、キラが深い溜め息を吐いた。

「済まないな、ミーナまで。どうも私の子供たちは普通に産まれてくれなくてな。元気なことは良いことだが、まったくここまで来ると呆れてしまう……。赤ん坊のクセに、一体どうやったら腹の中からロケットのように飛び出せるのか不思議で仕方な――」

「キラ」とキラの言葉を遮ったリュウ。「院長から色々突っ込まれる前に頼む」

「? うむ」

 と、首を傾げながら承諾したキラ。

 それを確認し、目を閉じた院長。

「すぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」

 と大きく息を吸い込み、

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー……!」

 と吐き出して深呼吸をしたら。
 いざ、目を見開き、

「はい、キラさん! 一ヶ月分のウン○を出す勢いでいきんで!」

 と声をあげた。
 それを聞いたキラ。

「ふぬぁーーーっ!!」

 と力一杯いきんだ。
 次の瞬間、

 スポポポォォォォォォォォン!!

 とキラの腹の中から発射された、黒猫の耳の付いた3匹の子供。
 それはヘソの緒を、

 ブチブチブチィッ!!

 とぶっ千切り。
 1匹は院長の腹へ、

 ズゴォッ!!

 と突っ込んでしまったが、2匹目はリュウの手へ、3匹目はミーナの手の中へ。

「ふみゃああぁぁあぁぁっ!」とあまりの勢いに、ぎりぎりのところで子供を受け止めたミーナ。「あ…危なかったぞーっ……!」

 バクバクと激しい動悸を感じたあと、産声をあげている子供に目を落として笑顔になった。

「やっぱり女の子供は可愛いぞーっ、羨ましいぞーっ! なあ、リュウ? この子たちの名前は何だ?」

「上からユナ・マナ・レナだ」

「ユナ・マナ・レナ……」

 と、ミーナが3度繰り返し呟いている傍ら、院長は咽こんでいる。

「ゴホゴホッ…! …キ…、キラさんお子さんを産むたびに吹っ飛ばす威力が増してますねっ……!」

「……。…わり、院長」

「は、ははは…。だ、大丈夫ですよリュウさ……ゴホゴホッ…ガハァッ!」

 と涙目になって蹲る院長。

「だ、大丈夫すか……」

 と顔を引きつらせながら院長に治癒魔法を掛けたあと、リュウは産まれたての娘たちを院長や看護師に任せてキラに歩み寄った。

「お疲れ、キラ」と、はっきり言ってキラはほとんど苦労していないのだが、それでも治癒魔法を掛ける。「産んでくれてありがとな」

「うむ」

 と主――リュウの笑顔を見つめて、キラは微笑む。
 産んで良かったと思える瞬間だ。

「ユナ・マナ・レナか。良い名前だな、リュウ」

「おう。絶対嫁にやらねーぜ」

「……(うちの娘は皆哀れだぞ……)」

「さて、無事に産み終わったし、家に帰ったら早速……」

「ああ、早速シュウの修行かリュ――」

「イトナミタイムだな」

「――!?」キラ、驚愕。「お、おまえという奴はあぁぁあぁぁあ!」

「しばらく生で出来ねーのが残念だが、子供出来るとシュウの奴がうるせーからよ。何でモンスターにはピル効いてくれねーかな」

「か、帰ったらおまえはすぐにシュウの修行だ、リュウ! シュウはおまえが帰って来るのを今か今かと待っているぞ!」

「はぁ? あいつが?」

 と、リュウは眉を寄せる。
 何かとリュウに突っ込んだり文句をいうシュウが、自分の帰りをそんな風に待っているとは考えにくくて。

 キラが続ける。

「シュウはな、口に出しては言わないが、誰よりも強いおまえに憧れているのだ! 超一流ハンターとして人々を守っているおまえを尊敬しているのだ! おまえに言われずとも、おまえのように強くなりたいと思っているのだ!」

「ふーん……」

 と、キラから目を逸らしたリュウ。
 キラの言っていることが間違ってなかったとしたら、何だか少し照れくさい。

「だから帰ったらシュウの修行に付き合ってやるのだ、リュウ!」

 ふん、と鼻を鳴らしたリュウ。

「仕方ねーな、帰ったら真っ先に構ってやっか……」

 と呟いて微笑んだ。
 
 
 
 リュウたちが葉月病院へ行っている頃、留守番中のシュウとミラ、サラ、リン・ランはリビングに集まっていた。
 ミラやリン・ランは女の子の玩具を出して、サラは男の子の玩具を出して遊んでいる。

 そしてシュウは、竹刀を手にうろうろとしていた。
 シュウの落ち着かない足音に長女・ミラ(4歳)が黒猫の耳をぴくぴくと動かし、気になってシュウに顔を向ける。

「お兄ちゃん、さっきからどうしたの? ドロボーさん来ないかみはってるの?」

「オレはおまえたちイモウトを守らなきゃいけないから、それもあるんだけど……」

「じゃあ、あたらしいイモウトができるのが楽しみなのね♪」

「ま、まあ、なんだかんだでイモウトはかわいいから、それもあるんだけど……」

「じゃあ、なんなのだ兄うえ?」

 と、声をそろえて訊いた双子の三女・リンと四女・ラン(2歳)。
 妹たちに見つめられながら、シュウは照れくさそうに言う。

「オ…オヤジを待ってるんだっ……」

「ファザコンなんだ、アニキ」

 と短く笑ったのは、次女・サラ(3歳)だ。

「ちっ、ちげーよサラっ!」と、シュウは赤面する。「そんなんじゃねえっ! オヤジ、びょーいんに行くまえにオレに言ったんだ。帰ってきたら、オレのことビシビシきたえて強くしてくれるって……!」

「なんだ、Mか」

「? エム?」

「知らないの? ガキだね」

「う、うるせえ! サラおまえそれ、ぜってー変な言葉だろ! まだ3つのクセに、なんてマセガキなんだ!」

「ふん」

 とサラがシュウから顔を逸らし、再び男の子用の玩具で遊び始める。

「か・わ・い・く・ね・えっ! …と、ともかく、オレのしょーらいのユメは『オヤジをこえること』なんだ! グレルおじさんもバケモノ並につよいけど、あの人を師しょうにしたら何か死にそうだし……。だ、だから仕方なくオヤジにきたえてもらうんだ! ファ、ファザコンなんかじゃな――」

「おい、帰ったぞ」

 と、シュウの声を遮るように玄関の方から聞こえてきたリュウの声。
 それを聞くなり、ぱっと笑顔になったシュウ。

 嬉々として黒猫の尾っぽをパタパタと振りながら、他の妹たちよりも真っ先に玄関の方へと駆けて行った。

「おかえり! オ・ヤ・ジィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
 
 
 
 
本館『NYAN☆PUNCH!』

第3話 初・ゲテモノ 前編

 ユナ・マナ・レナの三つ子がキラの腹の中から発射されたのは約一ヶ月前のこと。
 息子で長男のシュウを一流ハンター以上でデビューさせようと考えているリュウは、それ以来シュウの剣術の修行を厳しくした。

 それ故に、

「うわぁぁああぁぁあぁぁあん!」

 修行場――自宅屋敷の裏庭に、たびたび泣き声が響く。
 リュウから強くしてもらえると聞いて張り切っていたシュウだが、ここまで鬼だとは思わなかった。

 朝起きたらまず、体力作りとウォーミングアップを兼ね、リュウに着いて葉月町をジョギング10km。
 そのあと自宅屋敷に戻ってきて裏庭へと向かい、腕立て・腹筋・背筋・スクワット等の筋肉トレーニングを各200回ずつ。

 そしてその後、竹刀を素振りするのだが。

「もう、うでが上がらねーよオヤジィィィィィィィィィィィ!」

「泣き言ほざいてんじゃねえ、シュウ。たかが素振り300回程度で」

「オレまだ4つなのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「明日から5歳じゃねーか。言っておくが、明日からはもっときつくなんぞ」

 とのリュウの言葉に、シュウははっとして振るっている竹刀を止めた。
 その瞬間リュウのゲンコツを食らったが、どきどきとしながらリュウの顔を見上げて訊く。

「それってそれって、竹刀から木刀になるからっ?」

「ああ。明日のおまえの誕生日プレゼントは木刀だ。木刀になったらますます腕の力がいるんだぜ」

 それを聞いて瞳を輝かせたシュウ。

「ていっ! ていっ!」

 と、元気良く素振りを再開した。
 リュウから聞かされていた。

 4歳までは竹刀で修行、5歳からは木刀、9歳からは真剣だと。

 憧れの武器はリュウと同じ真剣。
 まだ持てるわけではないが、竹刀を卒業したことは嬉しかった。

(オレ、あしたから一歩オヤジにちかづくんだっ!)

 と、思って。
 
 
 
 翌日、シュウ5歳の誕生日。
 リュウの親友であるリンクとそのペットのミーナ、リュウの師匠であるグレルとそのペットであるレオンが、リュウ宅のリビングへとやって来た。

 人間と猫モンスターのハーフの子は、約一ヶ月で立ち上がる。
 よって先月生まれた三つ子――ユナ・マナ・レナが歩き回っていた。

 大人たちから誕生日プレゼントをもらい、それを1つずつワクワクとしながら開けていくシュウ。
 1番嬉しいプレゼントはリュウからの木刀だと分かっているが、それでもワクワクした。

「あれ?」と、1つの箱を取り耳を近づけるシュウ。「この箱、ガサガサ音がする……。これダレからのプレゼント?」

「それはオレだぞーっと♪」

 と、グレル(34歳)。

 身長195cm筋肉隆々120kg。
 全身を黒く艶めいた体毛が覆っており、その外見はまさに熊だが、一応人間である。
 中身はキラと同レベルという極度の天然バカ。
 超一流ハンターでもあるが、現在は主に猫モンスターの専門雑誌『月刊・NYANKO』とそのハーフ専門雑誌『月刊・HALF☆NYANKO』の編集長として働いている。

「ちょっとグレル、その箱の中身何?」

 と眉を寄せながら訊いたのは、グレルのペットであるレオン(19歳)だ。

 普通は仲が悪いブラックキャットとホワイトキャットの間に出来た猫モンスター――ミックスキャットの彼は、現在リュウの弟子ハンターだ。

 青い髪の毛に赤い瞳、灰色の猫耳に尾っぽ。
 リュウやキラと出会った当初はツンデレだったものの、今ではすっかり真面目で心優しい青年だ。

「ん? 中身か? 子供が喜ぶものだぞーっと♪」

「子供が喜ぶもので、箱の中でガサガサ音を立てとる……? うーん……、カブトムシとかクワガタかいな?」

 と続いて訊いたのは、リンク(26歳)だ。
 リュウと共にグレルの弟子であり、基本的に人付き合いに疎いリュウの貴重な親友。
 16歳のときに他島からここ葉月島へとハンターになりにやって来たが、その地方訛りの口調は一生抜けそうにない。

 明るい金髪に、童顔。
 リュウと同い年であるが、並ぶとずっと幼く見えた。

「わあ、カブトムシにクワガタっ?」

 と嬉しそうに声をあげたシュウ。
 包装紙をびりびりと破いて剥がし、箱の蓋を開ける。
 すると中には、また2つの箱が入っていた。

「カブトムシとクワガタ……?」とリュウが不審そうに眉を寄せる。「それなら喜ぶ子供は結構いるだろうが……、俺とリンクの(根っからの純粋な救いようのない天然バカな)師匠が買ってくるか?」

「鋭いな、リューウっ♪ 中身はカブトムシとクワガタなんて詰まらないものじゃないぞーっと♪」

 というグレルの言葉にシュウは、じゃあ何だろうと首をかしげる。

「もっと美味いものだぞーっと♪」

 なんてグレルが続けるとほぼ同時に、2つある箱のうち1つの箱を開けたシュウ。
 次の瞬間、中から緑色のものが大量に飛び出してきて、仰天して声を上げながらリュウにしがみ付いた。

「――うっわぁぁああぁぁああぁぁぁあっ!!」

「げ」

 とリュウが引きつらせる傍ら、リンクも声を上げる。

「ぎっ、ぎゃあぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああ!! しっ、師匠なんやねんコレェェェェェェェェェェェェェ!!」

「何って、昨日他島に『NYANKO』の撮影に行ったときに沢山いたイナゴだぞーっと♪ な? 嬉しいだろ、シューウっ♪」

「おおーっ!」と声を高くしたのはキラとミーナである。「すごいぞーっ、さすがグレル師匠だぞーっ! 尻がムズムズするぞーっ!」

 とリビングの中を飛んでいるイナゴ目掛け、尾っぽを振るキラとミーナ。
 いざ狙いを定め、

「ふにゃあぁぁああぁぁぁあぁぁぁんっ♪」

 と飛び跳ね、イナゴに猫パンチしてじゃれる。

 そしてその猫パンチを食らった哀れなイナゴ君。

「ふあぁ……」

 と、ちょうど大きな欠伸したマナの口の中へと吹っ飛ばされて行った。
 
 
 
 
本館『NYAN☆PUNCH!』

第4話 初・ゲテモノ 後編


 リュウ宅のリビングの中、飛んでいる大量のイナゴ目掛け飛び跳ねたキラとミーナ。

 ビシィッ!

 とその猫パンチを食らった哀れなイナゴ君が、大きな欠伸をした六女・マナ(0歳1ヶ月)の口の中へと入って行った。

 基本的に無表情のマナ。
 何事もなかったかのように、生きたイナゴを口に入れたまま、その口を閉じる。

「――!!?」

 驚愕した一同の目の前、マナがもぐもぐと口を動かし始めた。

「マ、マナ!? だ、出せ! 口の中からイナゴを出すんだ!」

 とリュウが狼狽しながら駆け寄るが、マナは口を開けようとしない。
 その乳歯でイナゴを噛み砕き、磨り潰し。

 ブチィッ!

 と、口からはみ出しジタバタと暴れていたイナゴの足を手でぶっ千切る。

 ぽいっと捨てられたイナゴの足を見ながら、シュウが涙目になって近くにいたレオンにしがみ付いた。

「うっ、うわぁぁああぁぁああぁぁぁあ! マ、マナがこえぇよレオ兄ィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 シュウに加え同時に寄って来たサラ抱き締めながら、レオンは顔面蒼白して口を開く。

「う、うん…、僕もちょっと怖いっ……!」

 その傍ら、感心したように声を上げる天然バカトリオ――キラ・ミーナ・グレルが順に口を開く。

「おおーっ! さすがグレル師匠だぞーっ! マナ喜んでるぞーっ!」

「うむ、すごいぞーっ! さすがグレル師匠だぞーっ!」

「うんうん♪ マナは喜んでるぞーっと♪ オレの誕生日プレゼントは間違ってなかったな♪」

 と満足そうに頷いたグレル。
 シュウが開けていなかったもう1つの箱をマナのところへと持って行き、その蓋を開ける。

「ほーらほらほら、マナー♪ これも食うかー?」

「――ぎっ、ぎゃあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁああぁぁあぁぁぁぁああっ!!」

 と、全身にトリハダを立てながら絶叫したシュウとリンク。
 グレルが開けたその箱の中には、大量のザザムシ――カワゲラやトビケラなどの幼虫がウネウネと動いている。

 そのうちの1匹をグレルが指で摘み、

「はい、あーん♪」

 とマナの口元に近づけると、マナが言われた通り、あーんと口を開けた。
 そしてパクッと半分加える。

「おい、マナっ!」

 とリュウが口の中から出そうとするが、マナはリュウから顔を逸らしてそれを拒む。

 マナの口から身体の半分をはみ出し、ウネウネと暴れているザザムシ君。
 必死に逃げようとしているが、マナの口の外に出ている部分を、その小さな手に引っ掴まれ。

 ブチィッ!

 と噛み千切られ、体液を撒き散らし、ムシャムシャと食われご臨終。

「うわぁぁああぁぁあぁぁあぁぁあ!!」

 シュウとリンク、もはや半泣き。
 人によってはある意味物凄くホラーである。

 その一方、よほどゲテモノが気に入ったのか。

 リュウから大地魔法を受け継いだマナ。
 近くを飛んでいるイナゴに石を召喚してぶつけ、地に落とし、その小さな手で掴んで口の中へと入れてその味を堪能し。
 飽きてきたら、口直しだと言わんばかりに箱の中のザザムシを掴んで口に入れ。

「にゃあぁあぁあんっ!」

 と滅多に鳴かないのに、嬉しそうに奇声をあげる。

 それを見て、

「おおーっ! すごいぞーっ! 物凄く喜んでるぞーっ! どーれマナ、母上がおいしい飯を作ってやるぞっ♪」

 なんて張り切ったキラ。
 急遽離乳食を用意し、

 ビシィッ!

 と猫パンチで飛んでいるイナゴをご臨終させて中に突っ込み、

「うーん、いまいち味が足りないな」

 とザザムシを摘んで真っ二つにぶっ千切り、その体液を離乳食の中に入れてスプーンでよく掻き混ぜる。

 一応言っておくが、普段のキラは料理上手である。
 しかしながら、そんな事実を時には吹っ飛ばしてしまうくらい、頭は極度の天然バカなのである。

 そして出来上がった離乳食をマナの口の中に運ぶキラ。

「美味いか? マナ」

「にゃあぁあぁあぁあん」

 と再び奇声を上げて喜ぶマナを見て、キラは嬉しそうににこにこと笑っている。

「早くも私たちの娘の好きなものが分かって良かったな、リュウ?」

「……。…キラおまえ、本気でそう思ってる?」

「当然ではないか♪ これからマナを喜ばすには、虫をあげれば良いと分かったのだからなっ♪」

「いや、うん、そうなんだけどよ、俺の可愛い黒猫よ……? あ…あんまり見たくない光景っていうか……よ?」

 とリュウが衝撃に顔を強張らせる傍ら。

「ふにゃああぁぁああぁぁあぁぁぁああん!」

 と、五女・ユナ&七女・レナの泣き声が響き渡った。
 リュウとキラが振り返ると、そこにはユナを抱っこしている長女・ミラと、レナを挟んで座っている双子の三女・リンと四女・ランの姿。

「おい、今度は何だ」

 とリュウが訊くと、ミラ、リン・ランと涙目になりながら口を開いた。

「ユナがごはん食べてくれないわ、パパァァァァァァァァァァァァァァ!」

「レ、レナのハラがソコなしなのですなのだ、ちちうえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 
 
 
 
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